ビル事業計画に必要なデータと解説
目 次 税 金 初期投資 資金調達 営業収入 営業支出 更新費 減価償却


借地料

計画敷地が借地の場合,借地料が必要となります。
以前から借地をしていても、新規のビルを建設する場合には、条件の変更が必要となり、今後は平成4年8月1日より施行された新借地借家法に基づく借地権として、新規の契約が必要となります。新法に基づく借地権には、従来の普通借地権に加え、期間が満了したら、必ず返還してもらえるタイプの定期借地権が新たに設定されました。
以下に、権利形態別の借地料の目安を、述べていきます。
なお、この場合の保証金等の一時金については、初期投資の土地取得費の項目で設定します。

(1)借地権の分類へ
(2)普通借地権料へ
(3)定期借地権へ


(1) 借地権の分類

@普通借地権

<既存借地権>

平成4年7月31日までに設定された借地権で、旧法の大部分が適用されます。借地権の法定存続期間は、堅固な建物(鉄筋コンクリート造等)は60年、非堅固な建物(木造等)は30年とし、この期間中に建物が朽廃したときは、借地権は消滅するという原則を設けていました。しかし、借地権保護の立場から、よほどの場合でなければ、地主の更新の拒絶に対する正当な事由が認められず、借地権は、建物が朽廃しない限り存続する、ということが実態でした。

<新規借地権>

平成4年8月1日以降に設定された借地権で、新法が適用されます。借地権の法定存続期間は、建物の構造による区分をなくし、一律に30年とし、朽廃による借地権の消滅という規定も廃止になりました。更新の拒絶に対する正当な事由に対しては、従来の判例の判断基準を明文化し、運用することになっています。

A定期借地権

<一般定期借地権>

長期型定期借地権といわれるもので、借地期間を50年以上とし、期間満了後、建物を除去し、更地として返還するタイプです。

<建物譲渡特約付借地権>

建物買取型定期借地権といわれるもので、借地期間を30年以上とし、期間満了後、建物を地主が買い取るタイプです。

<事業用借地権>

事業用建物に限定するタイプで、従来の借地期間は10年以上、20年以下とされていましたが、平成20年1月1日施行の改正により、20年以下が50年未満と なり、一般定期借地権との空白期間がなくなりました。


なお、普通借地権のうち既存借地権は、期間が満了して更新した後や第三者に譲渡された場合も、新規借地権となるのではなく、既存借地権のままですが、今後裁判等になった場合、改正法規による基準で判断されて行くと思われます。


(2)普通借地権料

@実質賃料と支払賃料

借地料には、借地権設定時に支払われる権利金、保証金、敷金などの一時金と、毎期毎に支払って行く地代があります。一時金のうち、権利金は受領後返還しない所得であり、保証金、敷金は、契約終了時までに一定の条件により返還する預り金という性格を持ちます。
通常の借地料は、次に解説する算定方式により算出した実質賃料から一時金の運用利回り、償却額等を引いた値が、毎期毎の支払賃料になります。

A実質賃料の算定

実質賃料の算定方法には、土地価格の算定方法と同様の考え方で、次の3通りの考え方があり、これらを関連付けて決定することになります。

<積算賃料>

(基礎価格)*(期待利回り)+(必要経費)により算出します。このうち、基礎価格とは、いくつかの考え方がありますが、更地の価格、必要経費とは、固定資産税などの保有に対する税金と設定して良いと思われます。

<比準賃料>

近隣地域、同一需給圏の類似地域にある類似の条件で設定された借地権の新規地代と比較して求める方法です。

<配分法に準ずる方法に基づく比準賃料>

土地価格の算定における収益還元法と同様の考え方です。ただし、そこで得られる期待収益に対して、建設投資に対する期待利回りを引いたものが、土地に帰属する純収益になります。これを、地主と、借地人にどう配分するかということになりますが、今のところ定説はありません。土地利用に対して、借地人の貢献度と事業に対するリスクがあることから、借地人に対する配分割合が大きくなることが理論的だと考えます。


B借地権の簡易評価

路線価図に定められている借地権割合を利用する方法です。土地評価で述べた方式により更地価格を算出し、それにA(90%)からH(20%)と定められた借地権割合を乗じて算出します。その反対は、底地権価格となります。

路線価

借地料は、この価格に対して支払う一時金との差額を、契約期間内で割賦返済するという考え方で支払賃料を算出します。


(3)定期借地権

@一般定期借地権

建設省建設経済局宅地課宅地企画調査室の定期借地権普及促進協議会の調査(平成14年6月)による戸建住宅用の一般定期借地権についての保証金と地代との関係は表の様になっています。


保証金と地価の関係(地域別) 保証金÷(地価×敷地面積)

- 合計 10%未満 10〜20%未満 20〜30%未満 30〜40%未満 40%以上 平均値
全体 1455 162 768 464 55 6 18.04%
首都圏 543 31 180 285 44 3 21.25%
中部圏 424 71 305 47 1 0 13.88%
近畿圏 318 37 170 100 8 3 17.81%
その他 170 23 113 32 2 0 16.01%


保証金、地代と地価の関係ー地域別 (保証金×4%+地代×12ヶ月)÷(地価×敷地面積)

- 合計 0.5%未満 0.5〜1.0%未満 1.0〜1.5%未満 1.5〜2.0%未満 2.0%以上 平均値
全体 1449 7 32 261 778 371 1.80%
首都圏 542 1 10 105 318 108 1.82%
中部圏 422 3 4 104 227 84 1.72%
近畿圏 318 1 14 26 148 129 1.88%
その他 167 2 4 26 85 50 1.77%


これによると、保証金は更地価格の20%を中心に、10%から30%の間に多く分布しており、全国の平均値は、18%程度になっています。
保証金の金利を4%とした場合の地価に対する支払地代率は、1.5〜2.0%を中心に多く分布しており、全国の平均値は、1.8%程度になっています。

A建物譲渡特約付借地権

一般定期借地権に契約解消時の建物買取価格を加味した賃料が基本となります。建物買取価格の算定については、建物買取時点での時価なのか、建物自身の使用価値なのか、空家状態で自分が使用するのか、賃貸ビルでテナント付きの場合はその経済価値を引き継ぐのか等様々な条件に応じた諸説があります。
地主、借地人両者が納得する現実的な方法としては、今後建築費の変動はないものとして、借地上に建設される建築費を買取時の再調達原価とし、これに減価償却費を控除した残存価格とすることが、もっとも分かりやすい方法と考えられます。

B事業用借地権

定期借地権普及促進協議会会員、(社)不動産協会会員256社に対するアンケート(有効回答67社)によると、一時金と地代について次表のようになっています。

事業用借地権一時金の種類
一時金の種類 件数 割合(%)
保証金 74 65
敷金 19 17
権利金 15 13
権利金及び敷金 2 2
保証金及び敷金 1 1
その他 3 3
合計 114 100

事業用借地権一時金の設定基準
一時金の設定基準 件数 割合(%)
1〜3ヶ月 9 8
4〜6ヶ月 18 16
7〜9ヶ月 11 10
10〜12ヶ月 30 26
13〜24ヶ月 17 15
25〜36ヶ月 5 4
36ヶ月超 9 8
一時金なし 15 13
合計 114 100

事業用借地権支払賃料の更地価格に対する利回り
支払賃料利回り 件数 割合(%)
0.00〜1.00% 4 4
1.01〜1.50% 4 4
1.51〜2.00% 9 10
2.01〜2.50% 21 23
2.51〜3.00% 11 12
3.01〜3.50% 10 11
3.51〜4.00% 13 14
4.01〜4.50% 6 7
4.51〜5.00% 4 4
5.01%以上 8 9
合計 90 100

事業用借地権実質賃料の更地価格に対する利回り
実質賃料利回り 件数 割合(%)
0.00〜1.00% 4 4
1.01〜1.50% 4 4
1.51〜2.00% 5 6
2.01〜2.50% 15 17
2.51〜3.00% 19 21
3.01〜3.50% 9 10
3.51〜4.00% 13 14
4.01〜4.50% 7 8
4.51〜5.00% 5 6
5.01%以上 9 10
合計 90 100
*一時金の運用利回りを3%と設定。


一時金の種類としては、保証金が65%と最も多く、設定基準金額は平均で13ヶ月分となっています。また、更地価格に対する支払地代の利回りは、2%〜4%の間に分布しており、一時金の運用利回りを3%として加味した実質賃料は、2.51%〜3.00%を中心として分布しています。







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