ビル事業計画の手引き
目 次 目的と進め方 土地利用計画 建築計画 事業収支計画

ビル事業計画の進め方


ビル事業計画を進める場合の基本的な作業をフローにあらわしたものが、下図です。
この中で、事業主の立場や、関係する企業との業務内容により、すでに確認されている項目は、省略することは可能ですが、それぞれの立場で、同じような作業を行っていることは事実です。
また、事業の動機、目的については、先に述べたように、様々な事柄が考えられます。
その事業目的に適合する評価尺度を明確に持ち、段階ごとに、設定数値の裏付け精度に基づいた事業性の評価ができないと、同じような作業の繰り返しになることがあります。



 

(1)調査段階

まず調査段階としては、計画地の持っている立地評価からはじめます。
地域的特性や、敷地としての長所、短所を客観的に把握し、社会的な動向を加味しながら計画地の有しているポテンシャルを明確にし、その特性をもっとも利用できる候補用途のいくつかを選定し、土地利用計画書を作成します。
そして、土地利用計画の用途構成に基づき、その家賃負担能力から、いくつかのケースを想定した事業収支の比較検討を行い、事業目的と整合させることにより、事業の実現性と目標値を明確にすることがこの段階です。
この時点で、土地所有者の希望と事業実現性がかけ離れていれば、次のステップに進むことは無意味になりますし、後でトラブルの基になります。土地所有者の多くは、自分の保有する土地の評価を過大に評価する傾向がありますので、客観的に見た冷静な判断が必要です。

 

(2)企画段階

実現可能性を持つ事業条件が整理されれば、次の企画段階へと入ります。
計画地の持つ法的条件の中で、建築可能なボリュームと、その空間特性を把握し、その選別した用途に対して、適切な空間が提供できるかの評価を行い、抽出された用途構成に対する実現性と概略のフロアー構成を把握します。
そして、この段階で、調査段階でまとめた土地利用計画書により、事業に関連すると思われる企業にヒヤリングをかけます。これは、実需を把握することになり、その業界に精通している企業との話し合いの中で、次に検討する事業方式や、事業収支における賃料の目安、建築計画の詳細仕様などの条件も入手できるからです。
関連すると思われる企業とは、一般事務所ビルや賃貸マンションの場合は、一括業務受託を行っているデベロッパーや地域の情報を持っている不動産会社であり、商業ビルの場合は、キーテナントとなる流通大手企業などです。
そして、これらの情報を基に、建物全体の用途構成や、建物延床面積、賃料収入などを設定し、企画段階の事業収支計画を算出します。企画構想書と呼ばれる成果品です。
関連する企業との役割分担を前提にした事業方式を立案し、その前提に立った事業コストの設定数値が無理ないところにおさまり、事業の実現性が確認できれば、次の基本計画段階に入ることになります。

 

(3)基本計画段階

基本計画段階では、ボリュームチェック、選定用途による要求機能に基づいた建築基本計画を作成し、事業方式による資金計画、コスト概算に基づく事業収支基本計画の構築をします。
この段階で作成される基本計画書が、事業実施に対する予算書になり、各専門業者に対する要求基本仕様書となります。

後は、事業実施段階において、この基本計画で作成した予算書に基づき各種専門業者との契約により、それぞれの金額が確定して行くことになります。
したがって、この基本計画書の作成作業が重要であり、将来のことを予測するために、確定はできませんが、あいまいな部分を先送りにしないことが大切です。
そして、建設工事が始まれば、工程管理、品質管理などのチェック機能や、各種業務間の調整を行いながら、竣工、開業の準備へと入って行くことになります。

 

 


[目次] [目的と進め方] [土地利用計画] [建築計画] [事業収支計画]

[PM-NET top]