ビル事業計画の手引き
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形態規制緩和手法


以上のような建築基準法に基づいた形態規制は、市街地における一般的な建築行為に対する規制であって、その結果、必ずしも良好な都市環境を創出しているとは思えない建物を生み出す事になっています。このため、良好な都市環境を形成するために、有効であると認められる建築計画に対しては、建築基準法の上位法である都市計画法によって、形態規制の緩和を行う計画制度手法を指定しています。
これらの制度は、その発生から手続きのフローとして、
@ 行政主体が良好な市街地を形成するために自ら誘導していくもの…地区計画制度、高度利用地区制度
A 民間からの申請により都市計画法の地域地区として設定するもの…特定街区制度
B 都市計画法、建築基準法にのっとった制度として存在するもの…総合設計制度、市街地住宅総合設計制度(市住総)、一団地認定制度、連坦建築物設計制度に分けられます。
実際の技術的な適用については、細かい規定が様々あり、詳述を避けますが、それぞれの制度のおおきな特色などを、民間からの申請により適用可能となる上記A及びBについて以下に述べます。

(1)特定街区制度

都市計画の最小単位である4方を道路で囲まれた街区を単位とし、一般的な形態規制を適用除外して、別に定める実行型の基準を用いて個々の計画に対して都市計画として承認していく制度です。いわば、事業者と行政側とのパートナーシップに基づく制度といえます。
適用可能な前提条件としては、街区として形が整い、その面積が、
@第1種/第2種低層住居専用地域…5000u以上
A近隣商業地域、商業地域…2000u以上
Bその他の用途地域…3000u以上
であることと、接する道路の幅員が
@容積率300%以下…主要道路8m以上、その他の道路6m以上
A容積率400%〜600%…主要道路12m以上、その他の道路6m以上
B容積率700%〜800%…主要道路16m以上、その他の道路8m以上
C容積率900%〜1000%…主要道路22m以上、その他の道路8m以上
が基本的な条件となります。但し、主要道路は、敷地周長の1/10以上接することが必要です。
これらの条件が整えば、行政との打ち合わせによる有効空地の整備等により、高さ制限の緩和や、容積率の割り増しなどが認められることになります。
但し、日影規制の緩和は、されないことが原則です。

(2)総合設計制度

昭和44年の建築基準法改正により制度化され、特定街区制度よりは適用条件が汎用的なため、積極的に活用されています。
適用可能な敷地面積としては、
@ 第1種/第2種低層住居専用地域、田園住居地域…3000u以上
A 近隣商業地域、商業地域…1000u以上
B その他の用途地域…2000u以上
C 用途地域の指定のない地域…2000u以上
接道条件としては、
@ 第1種/第2種低層住居専用地域、田園住居地域、第1種/第2種中高層住居専用地域、準住居、準工業地域…6m以上
A 近隣商業、商業、工業、工業専用地域…8m以上
B 無指定地域…6m以上
但し、接道長さは、敷地周長の1/8以上が基本的な条件です。
その上で、制度化された基準にのっとり、計画的に一定の空地を確保することにより、容積率の制限、道路斜線の制限が一定の範囲で緩和されます。但し、日影規制が緩和されないのは、特定街区制度と同様です。

(3)市街地住宅総合設計制度(市住総)

総合設計制度の実際上の運営に関する一つの手法です。したがって、基本的な適用基準は、総合設計制度と同様です。住宅の供給の増進を目的としているため、住宅に対する容積の割り増し率は、一般の総合設計制度よりも大きくなっています。
ただし、適用エリアは、3大都市圏などの既成市街地内における住居系地域、商業系地域などとされていますので、工業、工業専用、無指定地域は対象外となります。

(4)一団地認定制度

建築基準法の原則は、用途上密接に関連して、不可分である事が認められる場合を除いて、一つの敷地に対して、一つの建物という設定に基づき、適用される事になっています。しかし、特定街区制度や、総合設計制度を適用して、広い敷地に数棟の建物を計画する場合、全体を一つの敷地として計画した方が、総合的に良好な環境を創出できる可能性が高い場合があります。そこで、特定行政庁が、配置、構造について、安全上、防火上、衛生上支障がないと認めた場合には、弾力的な取り扱いができるようになっています。この制度の適用により、敷地の異なる容積の移転などの事例も出現しています。

(5)連坦建築物設計制度

前述の余剰容積の移転を、より簡便にできる制度として,建築基準法の改正で作られました。一団地建築物設計制度と比較すると、この連坦建築物設計制度は、「現に存在する建築物の位置および構造を前提として」その適用が認められるものです。 したがって、余剰容積の移転はもちろん、計画地が主用道路から奥に入り、道路付けが悪く、基準容積が消化できない場合にも、主用道路に接している既存敷地と連坦して一団地と認定されれば、建築の可能性が拡大する事になります。
これまでの特定行政長の制度活用事例を見ると、
4m以上の適正な幅員の道路を敷地内に設け、敷地の一定幅員道路への接道長も1/4や1/6以上を求める一団地認定に準じた「標準型」と、
密集市街地などで、防火措置の強化と引き換えに接道長を最低限で可としたり、道路幅員4m未満の通路でも認める「特例型」とに分類できるように思われます。
「標準型」の東京都の認定基準を見ると、
・ 区域面積:原則500u以上
・ 敷地の接道長:3000u未満は、原則幅員4m以上の道路に1/6以上
        3000u以上は、原則幅員6m以上の道路に1/4以上
・幅員12m以上の道路に接する以外の容積上乗せは1.5倍が限度
などとなっています。



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